Graphic Designer / Researcher

Added on by Laila Cassim.

8 Methods for Creative Growth / 創造能力を開花する8つの方法

Working with artists with learning disabilities in Sheltered workshops, one question constantly arose – “ With the design partner a passive recipient of the final design results, to what degree should the designer edit and interpret their drawings?  8 Methods for Creative Growth is a methodology created to help unleash the creative talents that lay within a person regardless of their abilities to help improve their artistic skills and self development. By increasing the quality of the art, artwork needing little editing could be created. 

These methods allow:

  1. Better ownership of the work by the beneficiaries

  2. An enhanced understanding by staff of the design potential of art activities in sheltered workshops who do not have expert knowledge on art

The Art work could then be used as the basis for new income and their social empowerment enhanced through holding exhibitions outside of the sheltered workshop environment.

 

これまで障がい福祉施設と行ってきた協働プロジェクトにおいて、一つの疑問が常上がりました。それは、デザイナーがどこまで利用者の絵に手を加えるべきか?ということです。私は1年間にわたりアート講師として、毎週足立区ににある綾瀬ひまわり園に通い、利用者ひとりひとりに寄り添いながら、スタッフと試行錯誤しそれぞれの「創造才能を開花する8つの手法」を開発しました。アートの質をあげることで最低限の編集しか必要でないアートワークを実現できるのではないかと考えました。

これにより2つのことが可能になります:

1.利用者の自身の制作物(アート)に対するオーナーシップ

2.スタッフのひまわり園におけるアート活動の重要性とポテンシャルの理解の向上

質の高いアート作品をつくることが施設への新しい経済利益の確立につながります。また、施設外での定期的な展覧会の開催で利用者のより活発な社会参加をもたらすきっかけにもなると強く信じています。

1.  Changing the size and material you work with / 画材とサイズを変える

画材を変えるだけで絵の印象は大きく変わります。まずは初め目にした絵に潜む可能性に気付くことが重要です。例えばは自閉症があり、高度なコミュニケーション能力があるTさん(40代・男性)は自身が好きな食べ物を描くことを好み、出会い当初は親指程度の大きさの絵を鉛筆で描いていました。絵をより近くで観察してみると、彼の描く線はとても繊細、的確でパースの理解があることが明らかになりました。これは見た物を直接イメージとして記録・記憶し紙上に変換できる造形的記憶力(ビジュアルメモリー)がとても高いことを示します。描く題材として渡す写真などと同じサイズに切った紙にいつも使う鉛筆と同じ太さのゲルペンで、写真と同じサイズで描くことを促すと、作品はより明確かつ生き生きとし、彼の精密で繊細な絵の才能がより目に見える様になりました。

自閉症のあるA氏(50代、女性)は花の絵を色鉛筆で描いていた。筆圧が極度に弱く、紙質が固いオフィス用紙に絵を書いていた為、絵が見えにくかった。柔らかい紙と色マーカーペンを使うことで、彼女自身、自分の描いている線が見える様になった。彼女の描く線はより簡潔で精密になり、数週間経つとアーティストとしての自信もついた。ちょっとした変革をすることで人の秘めた創造力(クリエィティブ)を引き出すこともできます。

Another artist with a learning disability liked to draw pictures of flowers on hard office paper with coloured pencils. Her weak pencil pressure made them difficult to see. Simply replacing the pencil with marker pens enabled her to see her own drawings, which soon came to life. Simple changes such as these can bring out and expand hidden talent.

Understanding the potential of a drawing beyond its initial presentation is crucial. One autistic artist drew small thumb-sized drawings of the food he liked.  His lines were extremely precise and intricate and an indication of the artist’s high visual memory since he could directly transcribe the images in his head or what he observed. I replaced his pencil with a pen of the same thickness and photographs of food and paper cut to the same size were provided as a guide. Accordingly, his drawings became bolder and dynamic. 

 

2. Converting movement into art  /  動き・行動をアートに転換する

ひまわり園では、アート活動は作業(仕事)ではないので、利用者はそれぞれ自由に活動の時間を過ごします。中には絵を描かない人もいます。重度のダウン症があり、コミュニケーションに限りがあるKさん(30代後半・男性)はその1人。毎週ティッシュペーパーを人差し指に巻いてはひらひらさせてアートの時間を過ごしでいました。この行動から読み取れるのは彼が指や手首を上下に振る感覚が好きだということ。工夫をかさね、ティッシュを事前に絵の具をつけた柔らかい筆に差し替えたところ、K氏はすぐに興味を示し、色彩鮮やかな抽象画を描く様になりました。さらに言葉の発せないK氏にアイコンタクトと動作を通し、自分の好きな色を選択し、絵の具のキャップを開け、色を混ぜる工程などを続く数ヶ月にわたり訓練しました。今では絵画の工程をほぼ1人で行うことが出来るまでに成長し、色鮮やかな色彩がを書きます。時には絵の描き方だけでなく、利用者が好むちょっとした動き・行動や感覚が造形能力を高める為の良いヒントになることもあります。

Art classes are not classified as work within Himawari-en with participants free to do as they please. This includes not drawing or painting. One artist with severe Downs' Syndrome used to wrap tissue around his finger and tap it back and forth for pleasure. By substituting a pre-inked brush for the tissue, the artist quickly started to create vibrant abstract colour paintings. The small movements beneficiaries make and the sensations they enjoy like can become vital clues and triggers to develop their potential.


 

3. Making Templates / テンプレートをつくる

利用者の多くは絵の描き方が分からなかったり、描きたくない人がいます。その為、塗り絵ブックはアートの時間の定番のひとつ。当初、利用者は4歳児から5歳児ぐらいが使うアニメや漫画の塗り絵ブックを多く使用していました。このような題材を提供するには欠点が2つあります。ひとつは利用者が成長した大人にも関わらず大人としてではなく子どものように扱い扱われる事に慣れてしまうこと。これは社会の利用者に対する認識にも影響を与えてしまいます。もう一つは、利用者の力強い有機的な線と色使いがアニメやマンガの画一的な線に埋もれてしまうこと。円や四角などシンプルなカタチに色塗りのモチーフを変える事で、利用者一人一人の特徴的な色使いと線のタッチがより表に出てくると考えました。また知的障害や自閉症を持つ多くの人は視力が低かったり、光などに敏感で視力が安定しないことが多い為、カタチの周りの背景を黒くすることで、自身の描いている色彩などの成果を認識しやすくなります。また、塗らない箇所を黒くすることで、利用者自身カタチの認知度を高め将来、自身でカタチなどをかく為の訓練にもなりえます。

Colouring books are popular in the art classes, since many beneficiaries choose not to draw or do not know how to do so. The colouring books provided are aimed at 4 to 5 year olds with many animal oranimation motifs. This underscores the notion that the adult beneficiaries are child-like. More so, theirdynamic mark-making, patterns and colour combinations are lost within the complex fixed outlines ofcolouring books. Providing stripped back templates with simple motifs and primary shapes that could be coloured in enabled their bold marks to come to life.

 

4. Create New Tools /新しい造形道具をつくる

大半の利用者は描くものだけでなく描く感覚から達成感を感じます。その為、彼らに様々な新しい感覚や刺激を与える事も大事です。Kさん(30代後半・男性)は紙に絵の具の筆を上下に叩く感覚を好み、色鮮やかな色彩画を描きます。しかし10秒も経てば飽きてしまい、しばらく筆を置いてしまいます。Kさんが描き続けるために新しい感覚を得る造形道具を開発する必要がありました。水彩の絵の具を吸い取り、紙の表面に押すと色彩が広がるスポンジブラシにK氏は直ぐさま反応し、再び描き始めた。スポンジブラシは一般に売っている家庭用スポンジと割り箸で簡単い作れます。利用者の多くが梱包作業で割り箸を扱い慣れている為、新しい道具とはいえすぐに慣れた。利用者の多くは日常のリズムや習慣の変化に敏感で新しいものの導入に時間がかかることもあるので日頃使い見慣れている材料で道具を作り、作成コストをおさえることで、スタッフ自身も新しい道具を開発でき、利用者の可能性を開かせる事に積極的に貢献できます。

Many beneficiaries get pleasure from the sensation of drawing. Thus, it is important to provide them with new sensations to stimulate ideas.  One artist likes to tap a paintbrush on paper but gets bored and stops after a while. A chopstick 'sponge brush' provided the artist with a new sensation and pleasure. The brush can be made from readily available materials, which sparked the interest of the staff in creating new tools and methods.

 

5. Give Encouraging Words / 言葉でサポートし自立した決断能力をつける

利用者の創造力の開花と発展の為に、利用者を言葉でサポートしながら激励・勇気づけることも大事なメソッドのひとつです。利用者のコミュニケーション能力が高ければ高い程、どう絵を描くべきか、何色にすべきかなどを訊きます。もちろんアートに正解や不正解はありません。
例えば知的障害があり高度のコミュニケーション能力があるMさん(30代・女性)は、自分の描くものや色を塗るものに対しとても気を遣います。何色に塗れば良いか聞かれたとき、単に色を指定するのではなく、様々な原色を提供することが大事です。また、描いたものが正しいかどうか聞かれたときに「いいですね」「素敵です」などの言葉をかけるだけでも利用者は勇気づけることができます。重要なのは指導をすることではなく利用者が自ら判断することをサポートすることにあります。そうすることで利用者の造形能力だけでなく自己啓発や自信にもつながります。

Simply guiding the artist through the creative process with words of encouragement can promote creative growth. Many beneficiaries with high communication skills find it especially hard to make creative decisions about how to draw something or what colour to use. There is no right or wrong in art. Providing a choice of primary colours, or praising work when asked if it is drawn correctly can build confidence. Such supportive words encourage creative growth and enable the artist to become confident in making their own decisions.

 

6. Select Good Quality Materials to Work From /創造能力の開花または発展をもたらす的確な題材選び

利用者が自ら好む方法で自由に造形をすることは重要です。特に自閉症を持つ多くの方は日常生活で毎日同じ習慣や習性を好む傾向があり、決まった計画と習慣があることが彼らにに安心を与えます。しかし、同じものを繰り返し毎日描くことや同じ色で塗りつぶすなど、同じ造形行動を繰り返す習慣は、社交性と創造力の発達などを妨げることもあります。繰り返し同じ物を描いたり、全て一色で描くなどは自分の殻に留まらせてしまう。例えば重度の自閉症があり限られたコミュニケーション能力のあるNさん(20代・男性)は、出会った当初毎回同様の丸く二つの目と一つの口の顔のモチーフを繰り返し描いていた。もちろん顔そのものは特徴あるものでしたが、オリジナリティーが少し欠けていました。数週間後に施設を訪れた研修生宛てに「ありがとう」のメッセージを紙に描いた。そのメッセージは細かい線そして色鮮やかな色鉛筆で描かれた「ありがとう」のスタンプの様なマークであった。このスタンプから彼がかわいらしい顔のモチーフ以上に強くグラフィカルな線と文字を描くことへの興味があることが伺えました。そこで文字を「描く」ことを進めることで普段描き続けている顔以外に新しい作品を描く様になった。言葉を通じて意志を発せないNさんは出会い当初は自分に閉じこもりがちでしたが、日が経つにつれも「ありがとう」など発せられる言葉をオウム返しするようになり、より人とコミュニケーションをはかる様になった。現在では文字見本、パッケージ、ポストカードや浮絵などを題材に、個性と特徴あふれる作品を描いています。

Allowing artists to create in ways they like is crucial.  However, for those with severe autism who prefer strict daily routines, carrying out repetitive actions can hinder their development and cause them to withdraw within themselves. One beneficiary would always draw the same face, over and over again. Cute as they were, they lacked character. One day he drew a symbol with the words 'Thank you ' in it for a student-intern who was leaving. This stamp showcased Mr. N's interest and talent for drawing graphic lines and shapes in all forms. We provided him with a wide range of material sources including font tables, packaging and Ukiyoe prints and the artist now creates a wide range of drawings

 

7. Understand the true meaning behind an Art Work / 作品の真の意味を読み取る

アーティスト(利用者)一人一人は作品制作にあたって独自のスタイルや、やり方を持っている事が多く、一度これを描くと決めたらその意志を貫き通します。大事なのは利用者の制作に対する動作やスタイルを徹底的に観察し、作品の裏にある意味となぜ描いているのかを読み解くことです。

知的障害がありコミュニケーションに限りがあるHさん(60代・男性)の色鮮やかな線で埋め尽くされる抽象画は誰もの目を引きます。彼の造形範囲を広めるべく、色塗りのテンプレート、様々な画材や題材を進めても増した。しかし彼は色ペンでいつもの抽象画を書き続け、やめる傾向もなかった。これまで描いた絵を再び検証すると、なぜ彼がいつも同じ様な抽象画を描くかのヒントがありました。絵の中には施設のスタッフや(利用者である)友達を含む名前や家、ビル、鳥居などの建築物が含まれていました。彼の絵は単なる抽象画ではなく彼のビジュアル的な日記いわば思い出・記憶なのです。Hさんは口数が少なく言葉をあまり発さないため、自らの記憶を絵にすることが彼にとっての表現とコミュニケーションの一つなのかもしれません。

無理矢理利用者に変革を求めるのではなく、時にはそっとしてあげることも大事な手法の一つです。

Each artist has their own unique style and approach to creating art. Once they decide on something, it is difficult to convince them otherwise.  Observing and understanding the meaning and reasons behind what they draw is key. One beneficiary draws vibrant and eye-catching abstract drawings. Although various methods were tried to encourage him to expand his creative range, he was never enthusiastic. When examined more closely it became clear that his drawings included outlines of buildings and the names of his friends and staff from the workshop. These drawings were his way of recording his memory and expressing feelings and thoughts since he cannot speak.  Sometimes, it is best to let someone be and not force change.

 

8. グリッドの活用 –  自発的なドローイングの後押し

テンプレートと同じくグリッドもカタチの理解と共に利用者が自身の意志で独立して描ける様になる手段の一つです。利用者の中でも(特にコミュニケーション能力の高い人は)間違いを恐れて自由に書く事を難しく感じ、題材の絵や写真を模写する人が多いです。模写するとはいえ、独自の解釈とタッチなどを加えた個性あふれる絵を描きまsy。しかし彼らが自らのアート(創造活動)に自信を持つ為には、恐れずに自信をもって創造力を発揮できるようにする事が大事です。その手段のひとつがグリッドの活用にあります。数週間かけてグリッドの升目を使い様々な平面や立体のカタチを描くことで形と空間の認識能力を高めます。ある程度の時間をかけたところでその形に小さいディテールなどを加え、絵に転換させる。例えば長方形の立方体の中に小さい四角などをつけくわえるだけで、ビルなどの建物の絵が出来ます。このように徐々に時間をかけて練習することで描くことに対しての恐れがなくなり、好奇心と自信がより芽生えてきます。

As with the creation of templates, using grids can be a good way to initiate independent drawing skills. By creating various shapes on gridded paper over a few weeks, the beneficiaries started to understand constructions of shapes and space. Slowly converting these shapes into drawings of buildings or other things by simply adding a rectangle in a cube, the beneficiaries started to become more confident in creating their own original drawings.